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『ベイマックス』

BD購入記念にエントリー。日本では去年の冬ごろに上映してたディズニー映画です。それなりに興行成績は良かったらしく、「アナ雪」に続くヒット作品になったとか。自分は映画館で吹き替え版を、BDで吹き替えと字幕版を観ました。初めて親子で映画館に行って観た作品だったりもします。

 
実は、最初に観たとき、ほとんど印象に残らない映画でした。というのも子供に合わせて「優しい映画」を選択したつもりだったのに、予想外にアクション寄りな内容で、息子たちの反応が心配で話にまったく集中できなかったからです。
なんせ、上の子はあの「アナ雪」ですら怖がって映画館を出てきてしまったぐらい(義母談)の怖がりなので。 (あれのどこが怖かったのか今もって不明です)
案の定、この映画でも息子は「こわい・・・」と呟くと妻の手を引っ張りつつ途中で退席してしまいまして、仕方なく残りの時間は下の子を見守りながら時々銀幕を眺めるような感じで、ほとんど話も分からず仕舞い。なんだかんだでエンドロールまで座っててくれましたが、自分は全然楽しめませんでした(苦笑)
ただ、後から聞いたら、下の子は案外楽しんでたとのことで、まぁ兄妹でもずいぶん性格が違うものです。
 
それはさておき「ベイマックス」。初めて子供と一緒に観た映画ということで記念にBDを購入して、家でゆっくり見直してみたのですが、いや、改めて観るととても良い作品なんですよ、これ。
実際、子供ともども、いまさらながら大ハマりしています(家で観るなら怖くないらしい)。
 
 
この作品、日本以外では「BIG HERO 6」というタイトルで、完全なヒーロー物として宣伝してるそうです。もともとマーベルの古くて超マイナーな漫画作品を元にしてるんだそうで、原作では登場人物がみんな日本人で、日本のオタクが戦隊物っぽいヒーローになって悪と戦うとかそんなストーリーだったみたい。
本作では主人公は日本人ですが他にもいろいろな人種の方々が出てきます。この辺りはグローバル展開を意識してのことなんでしょうか。中心になるロボット=ベイマックスが戦闘用ではなく、介護用に作られたケアロボットだというのも、如何にも今風で面白い設定です。
 
きっと誰もが言うことでしょうが、この映画の良いところは何と言ってもそのベイマックスの「かわいさ」。某タイヤメーカーに訴えられないギリギリの造形で上手いなと感心させられるというのはさておき、見た目が愛らしいというだけでなく仕草や間の取り方、セリフ回し、それら全部が「かわいい」です。あざとかろうが何だろうが、総合的に見て無条件でそう思わされる作り込みは流石だなーと思わざるを得ません。制作者のインタビューによると、日本的な kawaii を相当研究したんだとか。
他にも、何も言わずに見つめ合うような、日本のアニメーションで多用される「目で訴える」的なシーンなど、これまで海外では動きがなくて退屈と嫌われるような演出もかなり散見されました。一昔前のディズニーアニメにあったようなバタ臭さはもうほとんどないですね。
 
あと今作の舞台となっているサンフランソーキョーの街並みも素晴らしいです。こちらも作り込みというかクオォリティが半端ない。自分的には、ついに、日本人が観てもツッコミどころのない日本らしさが海外作品で再現されたなーといった印象。看板広告の文字とか、そこらへんに転がってるビンや段ボールのラベルとか、全てがとても自然に日本風です。今までのいい加減な日本リスペクトではなく、真剣に日本文化に向き合ってる感があってとても嬉しい。
 
それにしても最近のディズニーは、ディープなオタク要素を入れても広く一般に受け入れられる形にモディファイする力が凄いなぁと素直に感心します。同様に、子供も大人も楽しめる懐の広さも。
映画の口コミサイトなどで、日本のアニメが、ともすると「子供かファン向け」「大人は退屈」と書かれてしまうのと対照的だなと思いました。
一時期、世界に向けて強く発信していたジブリ作品が勢いを失くして久しいですが、日本のアニメは日本人が楽しめればそれで良いんだ的な内向き志向に陥らず、是非とももう一度頑張って欲しいものです。
 
話を戻しますが、キャラや舞台設定のクォリティが光る一方、ストーリーはあくまで王道です。昨今のマーベル系超人物をよく観てる人には、もはや食傷気味な展開かもしれません。でも実は、自分にとってこの映画で一番好きなのがそのストーリーだったりします。
個人的なツボはやっぱり主人公のお兄さん、タダシ。
ただひたすら人の役に立つロボットをと願い、ベイマックスを作った人です。
もう、この人の人生観が大好きで大好きで。エンジニアの鏡と言ってもいいのではないでしょうか。「アイアンマン」のトニー・スタークとはまたちょっと違った方向の、リアル路線での理想像とでもいうか。
以前にもどこかで書いたように、自分は、テクノロジーの進歩による人類の発展を強く願っているのですが、そのためには科学者や技術者が「善意」を持って仕事に取り組むことが大切なのだろうと思っています。そして、もっと大切なのは、その「善意」が後進に「継承」されていくことなのではないかと。
この映画では、まさに、その善意の継承が後半のストーリーの重要なキーとなっていて、自分は、何度見ても、とあるシーンで泣いてしまいます。なんでこんな他愛もなくに感極まってしまうのか、自分でもよく分かりませんが、まだよく理解できないであろう息子たちの横でこっそり静かに涙を流してしまうわけです。我ながら、おっさんはもう駄目かもわからんです。
 
余談ですが、この映画は吹き替えがとても良くできているように思います。
特に、今作のキーフレーズでもある「ベイマックス、もう大丈夫だよ」という台詞は、元は I'm satisfied with my care. なんですが、直訳すると「処置に満足したよ」であり、割と事務的なニュアンスになりかねないところを、敢えて平易で曖昧な表現にしています。これが、最後の最後、あるシーンで非常に良い味になるんですよね。他の言語版ではどのように訳されているのか分かりませんが、きっとこういう心遣いは日本語版だけのものではないのではないでしょうか。ローカライズに手を抜かない姿勢も非常に好感が持てます。
 
最後に不満点を少し。
主人公ヒロの「人助け」が兄の想いと微妙にズレているのは最後まで気になりました。タダシが言う「人の役に立つ」というのはヒーローとして活躍することを指しているわけではないはずなので、もっと普通にケアロボットとして役立てていって欲しいし、そういう地道な貢献をするベイマックスが観たいんですよね。
この作品は「アナ雪」などに比べれば非常に続編が作り易く、高確率で「ベイマックス2」が制作されそうな気がするのですが、もし続編を作るのであれば、新しいヴィランが出てきてBIG HERO 6のメンバーが再集結!みたいなありがちなパターンではなくて、ただただベイマックスがいて、クスっと笑えるだけのありふれた日常を描いて欲しい。ちょうど漫画の「よつばと」みたいな感じで。絶対ヒットしなさそうだけれども。
そういう意味では、エンドロールの挿絵がまさにそんなイメージで非常に良かったです。ベイマックスとヒロが中央線っぽい電車に乗ってる絵が個人的にイチオシです。
 
 

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