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『生物と無生物のあいだ』 読了

昨年末あたりにノンフィクション物が読みたいとここに書きましたが、そのとき知人Sが紹介してくれた本がコレでした。ずいぶん時間が空きましたが、やっと読むことができました。結論から書くと、予想以上に面白く、正味6時間ほどで読破。これは私にしてはとても早いです。大変満足しました。

この手のは科学エッセーとか呼ばれるんですかね。基本的にはノンフィクションなんでしょうけど、多分に著者の主観的なイメージや脚色、思想的なもの、もっとくだけた表現をすれば、「個人的な思い入れ」が含まれていて、そこがむしろ良かった。自分はこの手の本に客観的なデータだとか緻密な理論だとか推論といったものを期待していません。そういうのが読みたいのなら、ちゃんと教科書なり参考書なり論文なりを読むべきだと思うので。自分が期待するのは、知的好奇心をくすぐる事象の紹介、ただそれだけです。世の中にはまだどれだけ不可思議な現象、驚くべきメカニズム、ダイナミズムが存在するか。そして、人間がそういった探求課題に対してどのような情念をもって取り組んでいるのか、それが知りたいのです。そういった意味で、この本は自分にとってベストマッチした内容でした。

終章の、生きる上で必須となるはずの機能を先天的に(人為的に)破壊されたマウスが問題なく生きていく様を目の当たりにしたときの著者の驚愕とその後の感嘆は自分の心に強く訴えるものがありました。自然は恐ろしいほどに精巧で、それでいてやり直しの利かないガラス細工であり、人間の浅はかな知恵を遥かに超えるもののようです。かのアイザック・ニュートンは自分のことを真理の大海を前に波打ち際で貝殻を拾っている子供に過ぎないと言ったそうですが、それは自然科学者なら誰もが少なからず感じることなのかもしれませんね。

蛇足ですが、この本を読んで、とある解析コンサルタント会社のニュースレターに書かれていた以下の一節を思い出しました。

(前略)---多くの科学者やエンジニアは、人間が正しく自然を理解したことを自分の目で確かめたいという願望を強くもっています。この願望は善意でもあり希望でもありますが、合理性を上回る力を持ち、われわれを突き動かします。単純な善意でもなく希望でもなく野心とも割り切れない情念に人間を引き寄せる力を科学は持っています。見えるはずのないウィルスを顕微鏡の視野に追い、蹉跌の森に踏み込んでいった野口英世の心を知ることは、後世のわれわれにとって非常に難しいことであります。----(後略)

この本の根底に流れているものも、確かにこういった情念であったように自分には思えました。実際には非常に泥臭くてちっとも格好の良い世界ではないのですが、科学とは斯くも不思議なものですね。

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