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中世に生きる(最終回)

1257年6月4日。晴れた日でした。私は小高い丘の上に立ち、周囲を見渡しました。総勢500人に迫る軍勢が、突撃の合図を待っています。不敵な笑みを浮かべ、手慰みに得物をふらつかせる者、ひっきりなしに汗をぬぐい、神に祈りを捧げる者、どこか遠くを見つめながら馬に跨っている者。経験の差もあるのか、戦へ臨む姿はそれぞれです。カルラディア地方の東方に位置するこの砂漠地帯はこの日も強い日差しが照りつけ、私の鉄製の鎧を容赦なく焼いていました。軍勢が一心に見つめるその先には、巨大な城塞都市があり、サラン王朝の支配下にあることを示す無数の黄色い旗が風に揺れているのが見えました。3日前にヴァルドラット卿から至急の召集を受け、私は約50名の部下を引き連れてここに馳せ参じました。ヴァエギル国側の軍勢はヤログレク王が直接率いる近衛軍が120、ヴァルドラット卿の軍勢が200、そのご子息であるドゥルーリ卿の軍勢が80、そして私の隊を入れて約450名ほど。つい先ほど終わった軍議では、対するサラン王朝の守備隊は多くても300名程度ではないかとの憶測が流れていました。単純な数の比較ではこちらが上でしたが、圧倒的な地の利が相手にあることを考えると、これでも足りないぐらいではないかと私は思いました。ヴァルドラット卿の軍は城砦の南側に展開し、私の隊はその左翼先鋒を任されました。攻城戦において先陣をきって突撃する切り込み隊は通常、大きな被害を被る過酷な役割です。しかし上手く立ち回れば大きな手柄を立てることもできます。この日、部下たちの士気はとても高く、私の気分も高揚していました。
太陽が真上に昇った頃、ついに全軍前進の合図となるラッパの音が響き渡りました。私は部下全員に前進の号令をかけ、砂漠の上をゆっくり進みました。攻城戦では馬は不便なため、全ての隊員が下馬しています。ある程度近づいたところで再び号令をかけ、陣形を組み直します。先頭は盾を持つ歩兵。その後ろに狙撃兵と下馬した騎馬隊、殿を私と旅の仲間たちで勤めます。10歩づつ、ジワジワと前進していくと、数本の矢が鋭く風を切り、最前列の歩兵の盾に突き刺さるのが見えました。ついに戦端が開かれました。サランの弓兵はヴァエギルの狙撃兵に比べると劣ります。高度差があってもまだこちらに若干のアドバンテージがあることを見て取った私は、射程ギリギリのところで全軍を止め、弓隊に城壁の狭間に見え隠れするサランの弓兵を狙撃させました。私も前列に出てクロスボウで狙います。何本か適当にボルトを撃ち、その着弾地点から方向を修正してジワジワと精度を上げます。一方的な攻撃によって城壁上にいるほとんどの弓兵を蹴散らし、我々は壁を越える唯一の道である(誰が立て掛けたのかよく分からない)長い梯子に向かって再度移動を開始しました。正直、相手がその梯子を倒さないのがとても不思議でしたが・・・よほど自信があるのか、そもそも罠なのか。私は深く考えないようにしました。
梯子の下に着いたところで、弓兵にその場で援護射撃させ、私は歩兵隊とともに突撃しました。猛烈な勢いで梯子を上り、密集する敵陣に切り込んでいきました。私は長剣を左右に激しく振りますが、横並びの歩兵の盾が壁のように立ちはだかり、切り崩すことができませんでした。そうこうしているうちに、こちらの陣形が崩れ、私は3方を敵に囲まれてしまいました。丸型の盾を構え、前と左右の敵が振り下ろす武器を受け止めつつ、壁を背にしてなんとか味方の方にじりじりと戻って合流し、体勢を立て直しました。膠着状態を打破するため、下にいる弓兵たちに前進の命を出しました。弓兵たちは梯子を上ってきますが、距離が近すぎるためか抜刀してしまっていました。仕方なく私は敵陣の薄いところを狙って闇雲に剣を振り回しながら突進し、なんとか切り崩すことに成功しました。その後は味方と押し合いへし合いしている敵を背後からばっさばっさと切り、ようやく守備隊の第一陣を崩壊させることに成功しました。そして抵抗のなくなったところで全軍を梯子の上に移動させ、城壁の向こう側、城下町へと導きます。その頃には守備隊の第二陣が到着しており、街中で激しい戦闘が開始されました。私は弓兵とともに城壁の上に戻り、そこから狙撃しましたが、すぐにボルトが底を尽きてしまいました。もっと大きな矢筒を買っておくのだったと後悔しましたが、今更しかたありません。私は長剣を抜き、戦闘に参加しました。味方との戦いに気をとられ、隙を見せている者を狙って背後から切りかかりました。この手の乱戦では正面からまともに斬り合うよりも、挟撃して各個撃破が基本です。やがて、第二波、第三波も押し返し、我々はついに城の内部へと突入しました。ここまでのところ、我が軍の被害は微少であり、勝利はもう目前でした。しかし、ここにきて私はミスを犯してしまったのです。城の深部に入り込み、夢中で目の前の敵を倒しているうちに、私は味方とはぐれてしまったのでした。気がつくと私は3人の近衛兵を相手にしていました。そのうえ相手の武器は槍だったため、一方的に攻められ、部屋の隅に追い詰められました。ひたすら盾で防ぎましたが、ついに大きな音を立てて盾が壊れてしまい、私は長剣で槍の突きを逸らすのが精一杯になってしまいました。それでも隙をみて相手に切りかかり、やっと一人を倒しましたが、体力はもう限界でした。これで終わりかと思ったそのとき、敵の背後から誰かがメイスのようなもので襲い掛かりました。助かった!と思いその救世主をみると、それはなんとヤログレク王その人だったのです(本当にびっくりしました)。王は残りの2人をあっさり撲殺すると、軽いフットワークでまた部屋から出ていきました。とても60近い老齢の者の動きとは思えません。私は今度またヤログレク王と共に戦うことがあったら、王の近くで戦おうと心に決めたのでした・・・・。

そして私たちは戦いに勝利しました。味方は戦死者20名、負傷者約50名程度でした。これは大勝利と言っても良い結果だと思いました。ヴァルドラット卿からもお褒めのお言葉をいただきました。これで私の隊は覚えが良くなったことだろうと、私もとても嬉しく思いました。私はその夜、自分の隊員たちに、市場で急遽購入したワインとパン、ソーセージ、ぶどう、そしてチーズを振る舞って労いの言葉をかけ、この喜ばしい日を盛大に祝ったのでした。

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というわけで、このとりとめのない日記は終わりです。この後、いろいろあってヴァエギル王国の領主となり、村の統治を任されたり、でも、そこが隣国との境界近くだったので戦火が絶えず、あまり発展しなかったり、軍団規模を大きくしようにも資金が底を尽きて困ったり、お金のために政略結婚を企てたりしますが、それはまた別のお話。いつか、気が向いたら書くかもしれませんので、そのときはまたよろしくです(え?もういいって?)。 なにはともあれ、こんな自慰日記にお付き合いいただき、ありがとうございました。最後に、Mount&Bladeは、この日記のような体験ができる素敵なゲームです。自分でストーリーを妄想できる想像力たくましい方に是非オススメしておきます。戦闘も面白いです。ランスを構えた騎兵のチャージがこんなに怖いゲームもなかなかないと思いますよ。(完)

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どちらもお疲れ様でした

将棋のAIプログラムがプロの女流棋士と勝負したそうで。ニュースソースはこちらとか。このBlogにしては珍しく、ちょっとタイムリーな話題、と言っていいのかな。私は将棋に暗いので、残念ながら内容についてあれこれ考察することができません。きっと、詳しい人にとってはかなり興味深かい一戦だったのではないでしょうか。今回は計算機の勝利、ということですが、当然ながら前提となるプレイヤ同士の能力(のベクトル)がまったく違います。こういう前提条件の公平さをある程度無視した無差別級のような勝負は、どちらかというとお祭りに近いイベントであり、本質的には勝ち負けにあまり意味はないと思います。ただ、それを踏まえた上で外野があーだこーだと盛り上がれる楽しい話題なのも確かだし、当の本人や将棋連盟も、「これは公式戦ではない」と心のどこかで一定の距離をとりつつ、それでも勝負は勝負であり、負けたら悔しかったりするのかもしれませんね。

ところで今回、コンピュータ側は4つのプログラムに次の一手を計算をさせ、それぞれの結果を合議(多数決?)して最終的な一手にしたようです。私のような素人は、そのときそのときの最善手ばかり追求すると、一貫した作戦も何もなくなり、長い目で見ると悪手だらけになってしまうのではと心配になるのですが、プロに勝ったということはちゃんと流れを考えて決められていたということなんでしょうね。どんなアルゴリズムになっているのか興味があります。しかし人間と同等の思考力(それも1種類のゲームの)を得るために、まだこれだけの装置が必要なんですね。169台のPCクラスタというのは、たった6時間でも安定してフル稼動させるにはかなりの技術力が必要です。東京大学の人も対戦中にダウンしないかハラハラしてたんじゃないでしょうか。(まあ冗長系も用意されていたと思いますが) こういう話を聞くとむしろ人間の思考力のポテンシャルが如何に高いかを感じてしまいます。

昔、チェスのグランドマスターにIBMかどこかのコンピュータが勝負を挑んで2勝1敗でチャンピオンを下した、という話を聞いたことがあります。このとき、チェスよりもルールが複雑な将棋では人間がまだ有利なのではないか、と言われていましたが、今回の結果はここ数年の間にその差が縮まったと考えて良いのかもしれません。ただ、人間もコンピュータもまだまだ伸びシロがあるはずで、前述のチェスでは数年後に人間とコンピュータが再戦したら引き分けだったという話もあります。アブストラクト(偶発性が完全に排除されたゲーム)では、お互いのプレイヤが極まると、○×ゲームのように必ず引き分けになるものだと私は考えています。というよりも、最高の知性同士が対決すると引き分けになるのが優れたアブストラクトゲームだと思います。ただ、将棋はルールが複雑なので、現時点では必勝手が人間もコンピュータもまだ読みきれない。だからこそ勝負として面白いわけで、そういう意味では、まだまだこの手の挑戦は続くでしょう。

将棋はゲームです。人間がお互いの知性を競い合う、とても奥の深い遊びだと思います。AIは、やっとその人間と頂点を競い合える相手になりました。そして、そこまでプログラムを育て上げたのも、同じ人間の知性です。私はこの手のニュースが好きです。なぜなら、どちらが勝っても、それは人間の知性が勝利した証だからです。特にコンピュータに対する気持ちは、子供たちの成長を見守る大人の心境に近いかもしれません。今回、相手をした女流棋士が試合後に残した言葉にも、そのことが現れていて、とても良かったです。

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中世に生きる(その6)

私は主に北方の凍てついた大地を領土とするヴァエギル国を中心に活動していました。何度か土地の諸侯や国王の頼みを聞いたあと、ふと気まぐれに雇ってもらないかととヴァルドラット卿にお願いしてみると、あっさり傭兵として従事することを承諾してもらえました。たしかに酒場の主人などから、傭兵を欲しがっているという情報は得ていたのですが、これほど簡単に受け入れてもらえるとは・・・・。よほど戦況が悪化していて猫の手でも借りたい状況なのか、念願が叶って嬉しい反面、少し不安になってしまいます。
さておき、ようやく正規の軍事活動ができるようになった私は戦力の拡大を図ることにしました。これからは野党や海賊といったただの無法者だけでなく、ヴァエギル国と対立する国の正規軍を相手にしなければなりません。30人程度の手勢では単独での戦闘は絶望的です。そこでまず、国内の村々を巡り、志願兵を募りました。最終的に50名ほどになったところで一週間の賃金は金貨300枚ほど。片手間に交易をしながらなんとか維持できる規模と判断しました。
次に兵種のバランスを考えます。私の隊には現在、一般兵以外の旅の仲間が7名います。腕自慢の武士が3名(ロルフ、バヘシュツール、フィレンティス)、効率的な行軍経路の選定や足跡の追跡などを得意とするレンジャーが1名(デシャヴィ)、戦場での傷の手当、応急処置などを得意とする衛生兵が2名(イミラ、ジェレムス)、そして新兵の訓練を担当するハートマン軍曹鬼教官が1名です(レザリット)。残りの43名は一般兵ですが、20名を弓隊に、10名を騎馬隊に、残り13名を歩兵にする計画で育成することにしました。最終的には歩兵を重装歩兵にして槍を持たせ、ファランクスを構築して騎兵の突撃を止めつつ、ヴァエギル狙撃兵が後方から攻撃し、膠着状態になった場合はランスを持たせた騎馬隊にサイドもくしはバックからフランキングさせるというのが基本的な構想です。

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ゲームってなんだろう

「人間にはクリア不可能」と言われたシューティングゲーム、7年5カ月目にしてついに突破される。

上のニュースにリンクされてた動画を見て、人間って度を越したものを見ると言葉が出なくなるんだなと実感しました。「綺麗だな」って言葉だけはポロっと出たけど。

本当のゲームは暇つぶしにやるものじゃない、誰でもクリアできるものはゲームではない、と密かに思っている自分でも、コレはなんだかもうその域を超えてしまってる気がしました。価値観の違いとは思いますが、さすがに一つのビデオゲームに何千時間もかけてしまうと、全てが終わったとき虚しくならないだろうか・・・・。(お前が言うなって思われそうだけど)

個人的には、数年かけてやっとクリアできるバランスのゲームを作った製作者も素晴らしいと思います。数ヶ月かけて、というレベルなら意図的に作り込むのも可能かもしれませんが、それ以上難しくしてしまうとクリア不可能なものと紙一重になってしまうように思います。ま、いろんな「たまたま」が重なった結果なのかもしれませんけどね。
挑戦者も感無量だと思いますが、製作者も嬉しいニュースなんじゃないでしょうか。なんにしても、おめでとうございます&お疲れ様でした。

(追記)

某所で見つけた制作秘話?みないなのを転載。

CAVEのIKD氏(取締役、元開発部長/プログラマ)の理論だと

 1.FPSを半分に落とします。場合によっては1フレームずつ動かします。
 2.それでIKD自身が10回中6回は避けきったとします。
 3.IKDより100倍うまい人なら避けきれるはずなので、これを製品として送り出しても大丈夫!

だそうです。ある意味、ゲーム作りの勘どころが良かったとも言えるのかな。

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